Vol.13 Spring 2017「ポルシェという相棒」
最近、若い頃のことを振り返る。
若い頃は、どうしてあんなに楽しいことが多かったのだろう。いや、きっとその若い頃の自分もまた、さらに昔を思い出して、昔は楽しかったな、などと思っていたのかもしれないけれど。
今も昔も、――責任の大小は置いておくとして――、自分の周りに起きていること自体はそんなに大きく変わっていないはず。変わったのは、きっと自分の方だ。
若い頃、なにをやっても楽しかったのは、自分の感受性が敏感だったからだろうか。些細なことでも大きな起伏のあることに感じられ、そのひとつひとつの凹凸が面白かった。
徹夜で日帰りしまくったスキー。真冬のサーフィン。カセットテープにオリジナルベストを作って向かった行く先のないドライブ。
最近、そのどれもしていないことに気づいた。
そんな時間がない。そんな体力がない。
本当にそうか!?
思えばあの頃は、スキーをしていること、サーフィンをしていること、ドライブしていること、ただそれだけで最高に幸せだった。
たしかに今より体力はあったけれど、時間が今よりあったということはなかった。人はいつだって忙しいのだから。
見た目は、たしかにあの頃よりも少しだけ老けたかもしれない。けれど、魂は……。
まずは、行く先のないドライブから初めてみようと思う。クルマは普段脚に使っているヤツじゃ気分が出ないので、趣味の1台を手に入れて。できれば、刺激の強めなちょっと古い相棒の方がいい。
魂は、そう魂は老けないのだ。